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ベッドウォーミング・パン | キヤアンティークス
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ベッドウォーミング・パン

イギリスでは写真のような二枚のパンを抱き合わせた密閉型が主に使用されていましたが、穴の開いたタイプもヨーロッパで広く使われていました

 

こちらの大きなフライパンのようなものはヴィクトリア朝期、イギリスでベッドを暖める為に使われていた「ベッドウォーミングパン」という道具です。
ベッドウォーマーとも呼ばれ、先端の金属製パン(「皿状のもの」という意味)の中に炭や焼き石、焼き砂を入れ、それをベッドの中に挟んで寝具を暖める道具なのですが、実際はなかなか扱いの難しい代物だったようです。

ヨーロッパの煉瓦作りの台所、その竈(かまど)の近くに常備され、燃えさし(燃え殻)や熾火(おきび)などをパンの中に入れ、それをそのまま寝室へ運び、寝具に直接パンを挿して暖めます。
ただ、想像していただきたいのは、ついさっきまで焼かれていた炭を金属に入れて持ち運ぶわけですから、それはもう、熱いわけです。

実際、19世紀フランスの新聞に下のような一文が…

 

「・・・家庭には銅製のベッドウォーミングパンが欠かせません。寒い晩にベッドを温めたい時は、燃えさし、とりわけ赤い火の残る燃えさしをたっぷり用意し、しっかりと燻(くす)ぶらせてから使うようにしてください。そうしないと、火が移って寝具が焼け、直ぐに火事になります。かと言ってベッドの外に出してしまうとベッドは暖まりません。シーツが焦げないように、常にウォーミングパンを動かす必要があります。・・・」

 

実はイギリス以外の国ではパンに穴の開いているタイプが主流だったため、炭(燃えさし)をしっかり燻ぶらせて煙と熱を落ち着かせてから使用しないと、煙の臭いがついたり、寝具に火種が直接触れて焦げてしまったのだそうです。
なぜそんな危険なものを?と思いますが、その理由は密閉型に比べて穴あきタイプは空気(酸素)が炭に直に届くから。

パンの中の酸素が燃焼しきってしまうと冷めてしまう、密閉型ベッドウォーミングパンと比べて穴あきタイプは酸素に触れて安定して燃焼するため火種を使い切ることが出来、なおかつ少ない量の炭でも十分に暖をとれたのだそうです。
要するに、穴が開いているほうが燃費が良いという事でしょう。

ただ、密閉型のベッドウォーミングパンは穴あきタイプと比較すると火種が落ちて冷めるのも早い反面、安全性は勝っていたのではないでしょうか。
一長一短ですね。

 

ヨーロッパの各国、特に寒い地域でよく使用されていましたが、燃料事情の変化とともに(一部農村部を除き)より安全なお湯を入れるタイプの陶器製ベッドウォーマーや湯たんぽに取って代わられ、今ではそれらも電気毛布や電気あんかにその座を譲っています。

映画「パイレーツオブカリビアン」で使用人が使っているシーンがあったので、観たことのある方もいるのではないでしょうか?また、マザーグースの歌の中でも、ウォーミングパンが登場します。
19世紀当時はどの家庭にもあった身近な必需品であったと判ります。

今でこそ使用する家庭はほとんどないと思います(とは言え20世紀半ばくらいまでは田舎のご家庭で見ることもあったそうです)が、昔ながらの生活を大切にするイギリスのファームハウスなどでは壁に飾って楽しんでいる方もいらっしゃいます。
ヨーロッパの田舎作りの竈(かまど)には欠かせないアイテムです。

 

藤沢ウェアハウスで展示販売しています。

Shere
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