Tantalus/タンタラス
本日は、歴史を感じる一点物を紹介させて頂きます。
こちらのデキャンタ3本とオーク製ケースのセット、正式名称は「Tantalus/タンタラス」と言います。
装飾家具の一種で、いわゆるデキャンタ・スタンドですが、19世紀中頃からエドワーディアン期までの間、貴族や旧家といった豪邸で大変に流行した、装飾家具の一つです。(当時、ボトルが2〜3本入るタイプの物が普通でしたが、中には6本も入るタンタラスも存在します。)
こちらの物のような鍵付きタイプのタンタラスは、1870年頃のイギリスで初めて作られたそうです。
当時、貴族達の間では共通問題として、屋敷の執事が主人の寝付いた後にコッソリと屋敷のお酒を飲んでしまう事柄が頻繁に起こっていました。
しかし鍵付きタンタラスの登場によって、屋敷の主人達は大事な酒を誰にも飲まれる心配が無くなり、当時の大流行につながったとされています。
タンタラスの語源は英語の「Tantalise(タンタライズ)」で、意味としては「もったいぶらす、じらされる」といった、非常にもどかしい状態を表す言葉ですので、当時の執事達は身が焦がれるような思いで、屋敷にあるタンタラスを見つめていたのではないでしょうか。
ギリシャ神話に出てくるタンタロスの逸話がそのまま反映されたような家具ですね。
さて、こちらのタンタラス、下部についているプレートにご注目下さい!
“PRESENTED TO
S.Q.M.S., T. ASTON
BY THE MEMBERS SGTS MESS
9th Queen’s Royal Lancers”
ON LEAVING THE RECIMENT. DEC. 1908”
9th Queen’s Royal Lancersとは第9ロイヤル・ランサーズ(王立槍騎兵連)を指し、現在も英陸軍隊の偵察部隊として、当時のままの「第9ロイヤル・ランサーズ」の称号を残しています。
こちらのタンタラスは、1908年12月、当時の英国軍第9ロイヤル・ランサーズのT. Aston准尉が退兵する際、彼が所属していた軍のコミュニティから贈呈された物と思われます。
ちなみに、”squadron quartermaster sergeant(S.Q.M.S)” とは”需品・補給・管理を担当する准尉”という意味で、階級を指します。
准尉という階級は、軍隊を志願して兵隊として暮らしてきた人々にとっての到達点であり、その風格と経験を持って、兵からは信頼し尊敬され、上官である将校からは尊敬と共に畏怖もし、何より困った時の相談相手になる頼りになる存在です。
このタンタラスを受け取ったT. Aston准尉も、きっと人望の厚い人物だったのでしょう。
大変残念ながら、オリジナルのデキャンタは欠損しており、こちらはイタリアのCOLLE VILCA社(1960〜)によって1970-80年代に作られた、デッドストックのクリスタルガラスデキャンタをセットにしています。
3本ともに全く問題なく、実用頂けます。
また入荷時から鍵がなく、その為ハンドル部分(上部)をずらして開ける仕様へと改造させて頂いておりますが、本当にイギリス貴族らしい用途、且つ雰囲気のある家具であり、また世界に1点しかないお品です。
1908年 英国製 タンタラス
リース/レンタルも承っております。
お気軽にお問い合わせ下さい。
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