Spinning Chair スピニングチェア
珍しいアンティークチェアをご紹介します。
この、彫刻の美しい椅子はSpinning Chair(スピニングチェア)と言います。
Spinning Chairと言うと座面がくるくる回る、回転椅子の事も指すのですが、こちらのSpinningは糸紡ぎの事。
糸車(スピニングホイール)で羊毛(ウール)を紡ぐ時のため、専用に作られた椅子なのです。
19世紀、ウール産業が盛んだったスコットランドやウェールズで作られていた事が多かったようで、こちらの椅子も19世紀後半〜20世紀初頭頃のウェルシュ・スピニングチェアと思われます。
背もたれは背骨が曲がらないように真っ直ぐに、なおかつ糸を引く時に後ろに引いた肘に当たって邪魔にならないよう、背中の中心に沿って最低限の幅しかなく、かなり細身にデザインされています。
ウール生産が中世以来重要な産業であったイギリスはその生産量も多く、フランスのノルマンディーはじめ大陸の各国へ輸出されていました。
糸紡ぎは羊毛産地の住人にとって生業の一部であったと同時に生活に欠かせない要素でもあり、そういった地域では伝統的に婚姻のお祝いとして、このスピニング・チェアが贈られる事が多かったようです。
背もたれや座面には総じて美しいカーヴィング彫刻が施されていますが、ハート形のデザインが多いのはそういう事からなのかもしれませんね。
このスピニング・チェア、比較的原始的なタイプの椅子の一種ですが、その他のプリミティブ・チェアや、同じような構成で形作られているホールチェアとはまた違った、独特で素朴な魅力があります。
飾り椅子としても美しい、まさに伝統工芸品の椅子です。
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