ステンドドア修理 後編
前編に続き、割れてしまった1900年頃のステンドグラスのガラス交換修理です。
基本的にはステンドグラスのガラス交換は外側から患部まで最短距離でケームをカットしつつ解体し、ガラスを組み込んでから再溶接、という流れになります。
うっかりセンターピースを割ってしまったりすると摘出までかなり手間が掛かります。
不幸中の幸いで、患部は比較的外側でしたので解体するケームも少量で済みました。
ケームの素材はほとんどが鉛、稀に真鍮の物もありますがもう少し後の時代に多かったりします。
カットしたケームを後々再溶接するため、傷は極力小さく細くしたいところ。
最近は彫金用の細い糸ノコが調子がよく、多用しています。
カットしてはガラスを外し、を繰り返し、摘出は成功です。
外したガラスを型にしてお客様に選んで頂いたガラスをカットします。
ガラスとケームが嵌ったらハンダゴテで再溶接。
新品のケームを使った方が綺麗に治る場合もありますが、キヤアンティークスでは再起不能な材料以外はオリジナルをキープするため極力再利用するようにしています。
溶接したての箇所を薬剤で黒く変色させて周囲と馴染ませ、ケームとガラスの隙間に目地材を詰め込み完成です。
ドアへの取り付けは、ガラスパテを使用すると硬化まで時間が掛かり塗装の為もう一回出張、となってしまい、コスト的にもイマイチ効率が悪く、逆に乾燥の早いパテで仕上げると今回の様なイザという時に解体修理が難しくなるため、今回は工房で押し縁を製作、塗装してビス止めで押さえます。
これで次回トラブルがあった場合も最低限の手間でガラスの回収作業が可能です。
部分的に塗装を調整して完成です。
今回使用した交換用のガラスは割れたガラスとほぼ同じ時代に造られた物で、テクスチャもほぼ同じ。
オリジナルとは色が若干違いますが周りとのバランスも悪くないので目を瞑ることにしました。
押し縁も含めて修理前との違和感は最小限と思われます。
誤ってステンドグラスを割ってしまった場合、放ったらかしにしていても、欠けたガラスはケガの元にもなり良い事はありません。
何れかの方法で必ず直せますので早めのご相談、修理をおすすめします。
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