ヴィクトリア朝期のガラス製品 ワイングラスとテーブルウェア
19世紀末~20世紀初頭のイギリスで生産されたガラスの食器類。
以前同じくヴィクトリア朝期に作られたプレスガラス製品を紹介しましたので、今回は宙吹きガラス製法で作られた手作りのガラス器を持ってきました。
ミルクジャグとシュガーボウル、コップ、タンブラー、ショットグラスにワイングラス。どれも小柄で可愛らしいです。
特徴的な赤色のガラス製品はクランベリーガラスと総称されるコレクタブルアイテムで、より赤みの強いガラスをルビーガラス、ピンク味のあるものをクランベリーガラスと呼び、いずれも高価なガラス器の代名詞として知られています。
赤色ガラス作成は古代ローマ時代に発明された技法でしたがローマ崩壊後に失伝し、17世紀頃にボヘミア(現チェコスロバキア)のガラス職人達によって再発見・確立されたと言われています。
ヴィクトリア朝期には食器や酒杯を中心にガラスのシェードなどのクランベリーガラス製品が盛んに作られていましたが、調合には知識と専門性が要されるためクランベリーガラスを自前では作らずに専門の職人から購入して制作に使っているガラス工房も多かったそうです。
工房が材料となるガラスを他所から購入してクランベリーガラス製品を作っていた事(外注によって材料費がかさんでいたこと)もクランベリーガラスが高価とされる理由の一つですが、その鮮やかな赤味を出すための素材として金(塩化金)を混ぜる必要があるため、そもそも原価が高かった事が大きな要因です。
~20世紀前期にかけての工業技術の円熟による大規模生産が主流となる以前のガラス製品の生産は、主に職人による家内制ないし工場制手工業の産物でした。
宙吹きガラスは太古からある製法の一つで、吹き竿の先端に高温のガラス種を乗せて、それを回転させながら息を吹き込んで成型される過程で出来る独特のうっすらとした筋模様が胴体部分に見られ、ポンティル(ポンテ)と呼ばれる切断痕があるのもその特徴です(ポンティル/切断面は鋭利で危険なため、通常は研ぎ落とされています)。
デコラティブなプレスガラス製品とは異なった趣があります。
また、幾つかの品物はブラックライト(紫外線)を照射すると若干の蛍光反応を示します。
これは同時期イギリス中のガラス工房で盛んに作られていたウラニウム・ガラスの原材料が混ざり込んでいる影響と思われます。
今回紹介した商品はキヤ・アンティークス横浜店とオンラインショップに掲載中。
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