19世紀末〜20世紀前期（明治末〜大正・昭和初期）に作られた日本製の特注薬籠（やくろう）。

医療制度が確立され、現在あるような入院設備の整った病院施設が普及する以前は患者の自宅療養が一般的。
かかりつけの医師が患者の家に訪問し、診察･問診をするわけですが、その際に容器（硝子瓶）に入っている生薬や溶媒など原薬材料を調合道具を用いてその場で調合し、処方する事の出来る簡易キットのような道具です。
内容は生薬･溶剤を入れる薬瓶以外にも乳鉢・乳棒、メスシリンダー、プレパラート、スポイト、シリンジ、ベークライト製の薬匙（やくし）、蓋付きシャーレなど。

木製の薬籠本体とイニシャルの入った本革製ケース（持ち手付外箱）、そこに中身の薬瓶ほか簡素な道具類を合わせた一式となっています。

また、この一連の硝子瓶とガラスの道具類、珍しい日本製のウラニウム硝子で出来ています。

飴色の本革製ケースも素晴らしい出来上がり。部分的にそれなりの経年劣化はあるものの概ね良好な状態です。

蓋に当たる天頂部の外周を縁取る様に桜の花、四隅には銀杏の葉を象った押し型を用いた装飾が施されており、それぞれの中心にS.I.（もしくはI.S.）のオーバーラップイニシャルが有ります。

箪笥の素材は鉄刀木（たがやさん）、内側の間仕切りに朴ノ木（ほおのき）や桑（くわ）など、使用されているのはいずれも堅牢な日本古来の木材。

ぴったり収まります。

キヤ・アンティークス横浜店、オンラインショップで販売中です。

 

日本 アンティーク 薬籠