インレイ修復
何時ぞやの台風で、『家具が水没してしまったので直して欲しい』との修理依頼を頂きました。
イタリア、スペイン、フランスあたりのアンティークのサーバーですが、全体の修復に加え、天板の以上に細かい象嵌細工が水を吸って壊滅状態になっています。
象嵌とは薄く削いだ数種類の木材をカットして埋め込む装飾のことですが、こちらは非常に細かく手間のかかった作りになっています。
本来なら天板を無垢板等で作り直した方が現実的ですが、コスト度外視で修復を御希望頂きましたので、受けて立つ事となりました。
もはやどこから手をつけて良いか、気の遠くなる様な状態です。
そうも言っていられないので、まずはオリジナルの塗装を象嵌細工にダメージを与えないように注意して剥がします。塗装の痛みを取り払うと、少しですが先が見えてきたような気がします。
ここで、剥がれ掛けの突き板や、インレイは全て撤去します。
古い修理で象嵌の穴埋めにパテ(目地材)が使われていたので、ここも今回取り除き、オリジナルに近づけるために木材で修理しなおします。
象嵌の濃い色の木材はウォルナット、薄い色の木材はメイプルと判断し、同じ樹種の突き板を用意しました。
木目は全く同じものは用意できないので、ここは範囲内で探し選別して使用します。
ここから先は根気との戦いです。
大きいパーツ、小さいパーツを切り出し、整形した溝に落とし込んで接着します。
塗装は、素地に着色するとコントラストが薄まってしまうので、上塗りで若干着色しました。
上塗りはオーナー様と協議した結果、耐水性能の高い塗料を選択。
完成です。
全体像は撮り忘れてしまいましたが、概ね上出来です。
お客様にも喜んでいただけました。
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