残念ながら全てを網羅している訳ではないのですが、当時の家具によく使われていた木材を紹介いたします。アンティークを含む木製家具への理解がぐっと深まる豆知識です。
アンティーク素材
オーク(ミズナラ)
英国アンティーク家具を代表する木材。堅牢で水分や虫に強く、広葉樹の中でも比較的加工が容易なことからイギリスでは家具の創世記にあたる16世紀頃から家具材として大量に使用されるようになった。17世紀には自国のオークは殆んど刈り尽くしてしまった為、1900年以降オーク家具は殆どが輸入材によるもの。
マホガニー
アンティーク家具に使われていたマホガニー(主に中南米産)は現在ワシントン条約で輸出が制限されているため、新しい家具はアフリカ産等、別の産地のマホガニー材を使用している。赤褐色の木材で、生産国や成育した地形により木目が一変する。18世紀に大流行し、クイーンアン様式、ジョージアン様式の家具に多用された。
ウォルナット(クルミ)
木目が素直で美しく、加工性は全般的にそつがなく耐久性も高い。17世紀にヨーロッパ本土から英国に輸出されるに伴い、それまで主流であったオーク材の家具では難しかったカーヴィンク(彫刻)等の細工の入ったウォルナット家具が大流行した。
パイン(松)
カントリースタイルのインテリアに欠かせない素材。広葉樹より価格が安いため、子供部屋や使用人の部屋の家具に使われていた。脂が多く日焼けにより飴色に変色し、短い期間でアンティークな風合いが出やすいのが特徴。
エルム(ニレ)
オーク家具が主流の時代(16世紀~)から使われていた古参の木材。頑丈で板目に挽くと木目が明瞭で美しいため、カントリーチェアの座面等に多く使われている。乾燥が不十分だと歪みが出やすい木材の為、アンティーク家具では大きく捻れた板目の座面の椅子が存在する。バール(コブ)部分は薄くスライスされ、高級家具の意匠に使われる。
ビーチ(ブナ)
良材が世界中に大量に成育していたため、古くはトーネット社のベントウッドチェア、最近ではアーコール社の家具等、大量生産される家具の素材として重宝されていた。粘りがあり、歪みが出にくいので、強度の必要な箇所には最適。カントリーチェアの脚や背もたれなど、要所で使われている。伐採が制限されているため最近では高級材になりつつある。
チェリー(サクラ)
表面の仕上がりが美しいので、高級家具に使われる。広葉樹の中でも経年変化が美しく、使い込むほどに飴色に変化する。よってアンティーク家具でも濃く着色されたチェリーの家具は極稀。国産材でも本物のチェリーは「ホンザクラ」として少量のみ流通しており、出回っているサクラ材の殆んどは「樺」である。
チーク
大量の油分(木製タール)を含み、堅く、腐食や水に強い為、19世紀に家具材として使われる前から、船の甲板等の建造材として使われていた。堅さの割には刃の通りがよく、カーヴィンクも容易。仕上げた木肌の手触りは秀逸。チーク材は古ければ古いほど高級とされており、古い家屋や船を解体した古材が現在も大変高値で取引されている。
ローズウッド(紫檀)
堅く粘りがあり、削るとバラの芳香がするマメ科の木材の総称。英国アンティーク家具に使われていたるローズウッドはブラジル産(19世紀の当時ポルトガル領)を使用している。現在はワシントン条約の規制で殆んどの産地のローズウッドが規制の対象となり、国内にあるローズウッド製アンティーク家具はますます貴重になっている。
メイプル(カエデ)
古くから家具以外にも楽器や建具等の建材等にも使われる万能な木材。変わり杢(もく:希少価値が高い特殊な木目の意)の鳥眼杢(バーズアイメープル)や縮杢は希少部位として高値で取引される、変わり杢のメイプルは家具に使われる場合、薄くスライスしたものを化粧板として使うことが多い。
チェスナット(クリ)
木材としての流通量が少ないので、チェスナット材の家具は大変希少。高価な木材のため、婚礼家具等の高級家具・大型家具に多く使われている。また、英国よりフランスで作られていたものが多い。堅く加工がしにくいが弾力があり反り捻れ等の狂いが少ない。広葉樹の中でもかなりはっきりとした木目が特徴。
アッシュ(トネリコ)
オーク、マホガニー、ウォルナットと並び、ヨーロッパ家具4大木材の1つ。産地により素性が変わり、高緯度ほど良い材が取れる。木目が真っ直ぐで堅く粘りがあるので、素性の良い材はかなり繊細な脚物家具が作る事が出来る。南部で取れる素材は柔らかいため、注意が必要。ヨーロッパ産のアッシュが世界最良とされているが、木材としては日本で流通していない。